🧩 第1章:小さな棒が届いた ― Fiio KA11開封レビュー
ついに届いた、Fiio KA11。
価格は7,000円台。見た目はただの小さな棒なのに、ネットでは“音が化ける魔法の杖”なんて呼ばれてる。
でも正直、開封した瞬間の感想は——
「これ、高級チョコの箱じゃない?」

外箱は黒地に金の箔押しロゴ。
たかがドングルDACにしては妙に気合が入っている。
パカッと開けると、整然と収まった本体とケーブル。
質感は軽くて金属っぽいけど、手触りは冷たすぎない。
スマホ周りのガジェットでこういう質感を出してくるあたり、さすがFiio。
写真で見たときは「もう少し無骨かも」と思ってたけど、
実物はどこか上品。“研究室のスティックメモリ”みたいな見た目で、
Narita-Labsの白背景フォトブースにも映える。

接続もシンプル。
スマホに挿せば即認識、ドライバ不要。

ただ、音を出した瞬間に思った。
「あ、これは性格が強いヤツだ。」
初期印象は高域のキラつきが強い。
分離感はあるけど、刺さりも鋭い。
この時点では「クセがありそうだな」と感じつつ、
手持ちイヤホン4本を順番に試すことにした。
🎧 第2章:高音が刺さる!Moondrop LANとの組み合わせ
最初に試したのは、うちの定番リファレンス──Moondrop LAN。
KA11に挿した瞬間、「うわ、解像度高っ」となる。
音の輪郭がグッと浮かび上がって、ボーカルと伴奏がくっきり二層構造。
でも同時に、LANの“高域の鋭さ”も見事に強調されてくる。
「星街すいせい『もうどうなってもいいや』のサ行が、
まるで耳にチクッと刺繍されてるみたい。」
KA11は高域の伸びをブーストする傾向があるようで、
シンバルやハイハットの抜けがキラキラと前に出てくる。
そのせいで、ボーカルの透明感は増すものの、長時間聴くと少し疲れる。
低音はLAN本来の“控えめで締まった感じ”を維持していて、
全体的にスッキリしたチューニング。
ただ、刺さる部分が気になる人にはやや強すぎる印象かも。
「美人すぎて距離を感じるタイプ」
とでも言えばいいだろうか。
KA11は、LANの良さをそのまま“拡大コピー”する。
つまり、元が明るく繊細なイヤホンなら、そのまま倍にしてくる。
正確さを求める人には良いけれど、
リラックスして聴きたい時はもう少しマイルドさが欲しいところだ。

🎧 第3章:低音がドスドス暴れる!final E3000との組み合わせ
次に試したのは、おなじみのfinal E3000。
もともと穏やかでウォーム寄りのチューニングだが、KA11を挿した途端、
その温厚な紳士が急にプロレスラーに転職した。
「Hardfloor『Acperience 7』を再生した瞬間、
低音がドスドスと押し寄せてきて腹筋が震える。」
E3000はKA11との組み合わせで低音域が大きくブーストされる。
量感は出るけど、締まりがなく、聴き続けるとやや疲労感が残る。
まるで「ベース担当が調子に乗ってアンプのボリュームを上げた」ような印象だ。
さらにもうひとつ気になったのが、音の距離感。
ボーカルや楽器が薄いアクリル板を挟んだ向こう側で鳴っているようで、
どこか遠く感じる。
E3000特有の柔らかい中域がKA11で引っ込み気味になり、
“空間は広いけど中心がぼやけた”ようなサウンドになった。
「穏やかだった紳士が、
いきなりリングでドスンドスン暴れ出す感じ。」
高域の刺さりは抑えられる点は良いが、
その分、低域が盛られすぎてしまう。
KA11との相性としては「パワフルだけど疲れる」組み合わせだ。
夜にしっとり聴くタイプではなく、朝からジムでテンション上げたい時用かもしれない。

🎧 第4章:奇跡のバランス?Tripowin Ruta10との組み合わせ
ここで思わぬ伏兵が現れた。
Tripowin Ruta10。
もともとはドンシャリ傾向で、高域がややキラキラしすぎるタイプ。
KA11に繋いだらどうなるか――正直、「また刺さるだろうな」と思っていた。
しかし、再生ボタンを押した瞬間、予想が裏切られる。
「YOASOBI『勇者』のストリングスがすっと伸びて、
低域も締まっている。え、これ普通にバランス良くない?」
高域のギラつきがほどよく落ち着き、
低域も“ドスドス”ではなく“ドゥン”と芯のある響きに変わった。
KA11のクッキリした分離感が、Ruta10の“派手さ”をうまく整理してくれる感じだ。
「まるで、金属バットで殴り合ってた2人が、
試合後に握手して和解したような音。」
ボーカルも前に出すぎず、適度な距離感で聴きやすい。
EDMもロックも両方いけるバランスに落ち着いた。
全体的な印象としては、KA11との相性が最も良い組み合わせ。
とはいえ断言するほどではなく、あくまで「自分の手持ちの中では」ベスト。
「KA11とRuta10、まさかの仲良しペア。
お互いの悪癖を打ち消して、いい感じに大人になった。」
この組み合わせなら、長時間聴いても疲れにくい。
刺さらず、沈まず、ちょうど中間でバランスを取ってくれる。

🎧 第5章:カオスの極み。ダイソーHi-Resとの組み合わせ
そして最後の挑戦者は、あのダイソー ハイレゾイヤホン。
「百均なのにハイレゾ」という響きがすでにネタ枠だが、
ここまで来たら試さない手はない。
……結果から言おう。
聴けたもんじゃない。
「やしきたかじん『スターチルドレン』を流した瞬間、
バンド全員が違うテンポで演奏してるような混沌が広がった。」
高域はギラギラと派手すぎて、
ボーカルのサ行が痛いを通り越して“刺突”レベル。
中域は引っ込んで、誰がメインか分からない。
低域は膨らみすぎて、輪郭が溶ける。
結果、音全体がバラバラに暴れ回り、
まるで文化祭の体育館で複数のバンドが同時に演奏しているかのよう。
解像感は確かに上がっているはずなのに、聴感上はただのカオス。
「KA11の高性能レンズを、
濁った水槽に突っ込んだらこうなるんだろうな……。」
正直、ここまで相性が悪いとは思わなかった。
でも、これもKA11の“個性を増幅する”性格を証明している。
もともとバランスが危ういイヤホンを使うと、
その荒さまでも正直に引き出してしまうのだ。

🔋 第6章:実用面もチェック ― 発熱とバッテリー消費
音質の話ばかりしてきたけど、ドングルDACは“実用品”でもある。
毎日使うとなれば、発熱とバッテリー消費も無視できない。
まず発熱。
KA11はほんのりどころか、ジワッと熱い。
30分も再生していると、金属ボディが指先で「お、熱持ってるな」と分かるくらい。
冬なら手を温められて良いけど、夏はちょっと気になる。
「カイロ育成中かと思った。」
次にスマホのバッテリー。
これはもう、明らかに減りが早い。
1時間の再生で「あれ、こんなに減ってた?」と思う程度。
USB DAC全般に言えることだけど、KA11も例外ではなかった。
「KA11は食いしん坊。
音を良くする代わりに、電気をモリモリ食べるタイプ。」
とはいえ、熱も消費も“限度を超えて困る”レベルではない。
電車通勤や外出中に使う程度なら問題なし。
ただ、長時間のリスニングやエージング放置には注意だ。
携帯性に関しては文句なし。
本体は小さく、ケーブルも軽い。
ジャック部分の精度も良く、抜き差しにガタつきはない。
全体的には「小型ガジェットとしてよくできている」が、
やっぱり発熱と電力消費の“ジワッと負担”は感じる。
🎤 第7章:総評 ― イヤホンの個性をブーストする“小さな拡声器”
Fiio KA11をいろんなイヤホンで試してみて、
最終的に分かったのはたった一つ。
「こいつは“音を整える”んじゃなく、“音を増幅する”ヤツだ。」
KA11は、どんなイヤホンでもその性格を“倍”にして返してくる。
刺さるイヤホンはもっと刺さり、
低音が強いイヤホンはさらに重低音を響かせる。
万能補正タイプではなく、イヤホンの個性をそのまま拡声する鏡のような存在だ。
🎧 各イヤホンの印象ざっくりまとめ
-
Moondrop LAN
高域がブーストされて刺さり倍増。
ボーカルの分離は最高だが、長時間聴くと少し痛い。
→ 「美人すぎて近寄りがたいタイプ」 -
final E3000
低音がドスドス暴走、音が少し遠い。
落ち着いた紳士が急にプロレスラー化。
→ 「力強いけど疲れるタイプ」 -
Tripowin Ruta10
ドンシャリ傾向がまとまり、全体が聴きやすくなる。
KA11との相性が最も自然でバランスが取れている。
→ 「意外と仲良しペア」 -
ダイソーHi-Res
音がバラバラで纏まりがなく、高域ギラギラのカオス状態。
解像感は上がるが、聴感上は混沌。
→ 「文化祭カオス」
7曲を通して聴いた印象も、やはりその傾向はハッキリしていた。
静かな曲では繊細で、派手な曲では性格が出すぎる。
“味付け上手”ではなく、“素材の味を倍濃くする調味料”のような存在だ。
「KA11は押し売り営業マン。
分離感と解像感を“どうです、スゴいでしょ?”と毎回勧めてくる。」
それでも、うまくハマった時の音はクセになる。
とくにTripowin Ruta10との組み合わせは、
刺さりも暴れもなく、程よく整理された音で聴きやすかった。
🔚 結論
Fiio KA11は、“個性のブースター”であり“小さな拡声器”。
イヤホンの癖をそのまま映し出す正直者だ。
自分の愛機の性格をそのまま増幅して味わいたい人には最高の遊び道具。
ただし、静かに聴きたい人は──別の機種をおすすめする。
小さいけど、主張はデカい。
そんなヤツがKA11だった。
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